幸福の鈴
「幸福の鈴」の話をいたしましょう。
わたしが中学二年というと・・・14歳でしょうか。いまから40年も前のことですね。
その夏休み、わたしは交通事故にあいました。
自転車に乗っていたとき、わたしを追い抜きながら左折するダンプカーに巻きこまれ、足をケガしてしまったのです。
T整形外科という病院に運ばれ、その場で手術。
そこには一ヶ月くらいいたでしょうか。足の切断はなんとか免れましたが、それでも歩く機能は回復できず。
それで先生の紹介で転院することになりました。
転院が決まったとき「お見舞いにいくね」と言ってくれた若い看護婦さんが二人。
T整形外科には看護婦さんが五・六人いたと思います。そのなかで、いちばん若い二人でした。わたしとそれほど年齢もかわりません。
中学校を卒業し、そのままT整形外科に就職。そして働きながら看護の資格をとるため定時制の学校にいっていたのです。
転院してすぐ、大手術でした。
目が覚めたら、下半身がギプスでしっかりと固められていました。しばらくはベッドから動けない生活でした。もう不自由だし、ヒマだし。学校の勉強でもしていればいいんですけど、そんな気はこれっぽっちもなく(おかげで退院してからそのとき習っていたはずの数学の方程式だの英語の文法だの、なんだかんだと三ヶ月分抜け落ちたままいまにいたっております)。
そんなある日「こんにちはー」と二人でお見舞いにきてくれました。
「早く治ってね」とくれた木の鈴には「幸福の鈴」と書いてありました。
女性からプレゼントをもらいなれていないわたしは、ちゃんとお礼を言えたのかどうかはわかりませんが、とってもうれしいプレゼントでした。
でも、たいせつにしていても、そこはやっぱり40年。紙は焼け文字も見えにくくなっています。それでもわたしの「幸福の鈴」です。振ると、チリリンと鳴ります。
あのお二人はいまどうしているでしょう。会いたいです。
0コメント