うつの情景:メモ
先日あったイベント「こわれ者の祭典」で、うつについて語らせてもらうことになった。
そのときのために、当時を思い出しながらメモをしていった。
**********メモ
この世から消えてしまいたい。
でも、自分では死なないつもり。かろうじて、それくらいの分別はあった。
それでも、消えてしまいたい。
消滅したい。そっと消えてしまいたい。この世の自分の存在を、なかったことに、してしまいたい。
地上の記録から、自分を消してもらいたい。家族の記憶からも消してもらいたい。自分がそこにいたことを、なかったことにしてもらいたい。恥ずかしい自分の存在を消してしまいたい。
ここにボタンがひとつ、それを押したら自分が消えるボタンがひとつ、それがもしあったなら、この世にいなかったことになるというのなら、みんなの記憶から消えるボタンがひとつあったなら、そんなボタンがあったなら、わたしはそれを押したかもしれなかった。
もう、自分には指先でボタンを押すくらいのエネルギーしかなかったから。
すべてを否定したくなる。
自己肯定感を持てって言われても、なんだ、それは?
みんなちがって、みんないい?
ほんとか?
ほんとにそう思っているのか?
自分はそれほどちがっていないからと思って、優越感で言っているんじゃないのか?
「大丈夫か?」とか「がんばれよ」とか声かけられて、「大丈夫です」「ありがとうございます」と、そう答えることに、疲れている。
「本心で言ってくれているのですか?」と、うがった見方をしてしまう。
「大丈夫だよ、そばにいるよ」と言われても、それはしっかりとした信頼関係のない人に言われても疲れるだけだった。
そう、
できれば、
あなたには、
そばに、
いないでもらいたい。
わたしはあなたがそばにいられると、もっと疲れてしまう。
死ぬくらいならどこでもいいから逃げろって?
どこへ?
どこへ逃げていいかわからないから苦しいんだ。
自分のところに逃げてこいと言ってくれるというのか?
でも、いかない、そんなとこ。
そんな気をつかうところに、わたしは逃げていきたくない。
誰かに相談しなさいと言われても、そんなことできない。
人に見せたくない心の部分で悩んでいるのに、それを相談なんて、そんなことできない。
情けない自分のことで落ちこんでいるのに、そんな情けないことを人に語って相談できるようなら、とっくにしている。
元気を出させようと、元気な歌をうたってくれる人はありがたいのかもしれないけれど・・・
でも、元気な歌を聴くと、ほんとは疲れる。
元気な歌は、心がさらに消耗する。
聞き飽きたような格言を聞かされても、心は動かない。
くよくよするなと言われて、くよくよしないでいられたら楽だ。
気にするなと言われて、気にしないでいられるなら苦しまない。
うん、わかるわかる、そうだよねー・・・と、わたしの言葉をしっかり聴きもせず、ただなんでもかんでも肯定する、そんな声に身震いする。
わたしの言葉を繰り返し、うんうん、そうなんだねーと、いかにも傾聴の講習を受けてきましたからー、心理カウンセラーの勉強してますからー・・・みたいな、上から目線の受け答えに、気持ちが消耗する。
だから、その場から逃げたいから、その人の言葉に肯く。逃げたいから、ありがとうと答える。
あっちに行ってもらいたいから、「おかげで気持ちが楽になりました」とお礼を言う。はやく、あっちに行ってください。わたしを一人にしてくださいと、震えながら。
元気な人は言う。「それでいいよ」って。「そんなアナタがすきよ」って、言う。
でも、言われたほうは、そんな言葉が自分の心に入ってこない。オマエに好きになられても、オレ自身がオレを好きになれないんだよって思っているのに。
だいいち、それを本心で言っているのか?
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でも、ほんとに・・・
なんとかしたい。
ダメを認めることのできる自分になりたい。
イヤな自分を好きになりたい。
自分を認められない自分でいいんだ。イヤらしい自分でいいんだ。そんな存在のためのマイナスの自分でいいんだと自分を納得していたい。
それができないから苦しむんだけど。
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でも、信じる。
死なないかぎりきっと大丈夫だと信じる。無理矢理にでも信じる。
いつかまた、頭の上に空があるんだなって気がついたり、窓の向こうに青空があるんだなって思い出したり。トンボの羽音が聞こえたり。それまでは耳鳴りの中にいたような気分が、すこーしずつ晴れてくる。
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あの日にもういちど戻りたいとはけっして思わない。
でも、あの日のことに後悔はない。鬱になったおかげで、得たものがいっぱいある。ならなければ、わからなかったことがいっぱいある。
だから、鬱の人に「気を大きく持て」とか「小さなことでクヨクヨするな」なんて言わないから。
「おまえより苦しい人はいっぱいいるんだから、おまえもがんばれ」なんて、けっして言わないから。あなたのことを、他の人と比べたりなんか、けっしてしないから。
わたしは黙ってアナタの横で、アナタの好きなコーヒーを淹れていたい。いつかアナタがその香りに気づくかもしれないと願いながら。
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