ナナ子再び
ほんとはそんな気なんて、なかった。
最初からそんな気なんて、なかった。
いまのままでいいと、思っていた。
少々の不満はあるかもしれないが、それはお互い様だと、思っていた。
それでも、ことあるごとに誘われ続け、心が揺れてしまった。
「そんなにいいのか、オマエは?」
「そうよ、アナタの知らない世界に連れていって・あ・げ・る」
「でも、オレはいまの世界で満足しているんだ」
「あら、いくじなし。こちらの世界にいらっしゃいよ」
「冒険するほど、オレは若くないんだ」
「一度だけならいいんじゃない。気にいらなかったら戻ってもいいんだから」
「戻って、いいのか?」
「もちろんよ。それだけの自信はあるわ」
「そうか」
「最後のチャンスよ。わたしもうすぐ、いなくなるから・・・。ねえ、きて・・・」
「よ、よし!」
オレはとうとう禁断の扉を開けた。
誰のせいにするつもりもない、みなオレが決めたことだ。
分不相応。老いらくの恋と笑わば笑え。
心残りはナナ子。これまで長いあいだ世話になったあいつに、謝罪の言葉もなくボタンを押した。許してくれ、ナナ子。オマエに落ち度はなかった。
ああ、これからはじまるのか。
めくるめく、禁断の世界。
老いた体でも意外と速くなってしまうっていう噂じゃないか。
ちょっとわくわく。
し、しかし・・・
な、なんじゃこりゃー!
最初からそんな気なんて、なかった。
いまのままでいいと、思っていた。
少々の不満はあるかもしれないが、それはお互い様だと、思っていた。
それでも、ことあるごとに誘われ続け、心が揺れてしまった。
「そんなにいいのか、オマエは?」
「そうよ、アナタの知らない世界に連れていって・あ・げ・る」
「でも、オレはいまの世界で満足しているんだ」
「あら、いくじなし。こちらの世界にいらっしゃいよ」
「冒険するほど、オレは若くないんだ」
「一度だけならいいんじゃない。気にいらなかったら戻ってもいいんだから」
「戻って、いいのか?」
「もちろんよ。それだけの自信はあるわ」
「そうか」
「最後のチャンスよ。わたしもうすぐ、いなくなるから・・・。ねえ、きて・・・」
「よ、よし!」
オレはとうとう禁断の扉を開けた。
誰のせいにするつもりもない、みなオレが決めたことだ。
分不相応。老いらくの恋と笑わば笑え。
心残りはナナ子。これまで長いあいだ世話になったあいつに、謝罪の言葉もなくボタンを押した。許してくれ、ナナ子。オマエに落ち度はなかった。
ああ、これからはじまるのか。
めくるめく、禁断の世界。
老いた体でも意外と速くなってしまうっていう噂じゃないか。
ちょっとわくわく。
し、しかし・・・
な、なんじゃこりゃー!
97パーセントで固まったまま動かないではないか。
時計も止まったままで、すでに5時間が過ぎた。
ハードディスクのアクセスランプは点きっぱなし。
オ、オレはテン子にだまされたのか!
10年前のマシンT60P、老いらくの恋が終了しましたってかー。
あああ、マウスもなんにも動かなくなったあ!
テン子のバカヤロー!
ナナ子ぉ。
ねえ、戻ってもいーい?
テン子との関係は強制終了するから許してくれよぅ。
電源スイッチ長押しするからさー。・・・プチッ!
・・・画面が変わった。
そして、そこには懐かしいナナ子が再び・・・
いないし・・・ ( ̄∇ ̄;)
真っ黒画面のままだし。
マウスしか、いないし w(゜o゜)w
ナナ子、許して。
えーん、許してー ヾ(__ヘ)☆\(▼▼#) ばきっ
*その後、セーフモードから起動し復元ポイントを使って元に戻りました。
歳とった人は、誘惑に負けるととんでもない世界が待っているって学習しました。えーんえーん。
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