夕げの情景

 ご飯が炊けて味噌汁も煮えて、もうすぐ夕ごはんという時間に、脳梗塞の後遺症で、ちょっと認知症の入ってる要介護の我が父がやってくる。


 そして

 「おなかすいたから、バナナ食べようかな」ってテーブルの上のバナナに手を伸ばす。


 ふうっ。


 「じーちゃん、もうすぐご飯だから我慢しな」と言うと、しばらくそのまま手が止まり


 「うん、そうするか」と、戻っていく。


 

 父の茶碗にご飯を盛って、味噌汁盛って、オカズを盛って、それから父の部屋に迎えにいく。


 「じいちゃん。ご飯だよ」と。

 父は「うん」と言ってまたやってくる。


 椅子に座り、胸にウレタンのヨダレかけをつけ、ご飯を食べはじめる。


 「じいちゃん、おかず足りる?」

 「うん」

 「遠慮すんなね」

 「うん」


 食べ終わると、自分で食器を持って流し台に置く。

そして、とぼとぼまた部屋に戻る。



 残り少ないであろう父との時間。

 わたしも覚悟していかねばならぬ。


 父は、幸せなのだろうか。



uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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