ママ、泣いてね
「フジタさんのエッセイのファンです」だなんて、とってもありがたいことを言ってくださる奥様とお話をさせていただいた。
「・・・そうですよね、子どもは『いてくれるだけで』それだけで、すでに親孝行ですよね」と言っていた。
男の子の話、女の子の話、かわいいですねなんてことを言いながら和気あいあいとお話していたのだが、ちょっとしたことで不自然に間があき彼女は言った。
「私、二年前に高校生の娘を亡くしたんです」と。
私はどう返事をしていいのかわからず、ただ彼女の話を聞いていただけだった。
「・・・そうですよね、子どもは『いてくれるだけで』それだけで、すでに親孝行ですよね」と言っていた。
男の子の話、女の子の話、かわいいですねなんてことを言いながら和気あいあいとお話していたのだが、ちょっとしたことで不自然に間があき彼女は言った。
「私、二年前に高校生の娘を亡くしたんです」と。
私はどう返事をしていいのかわからず、ただ彼女の話を聞いていただけだった。
彼女はそれからの二年間、泣いていないという。娘さんがなくなった日からずっと、お通夜でも、お葬式でも泣いていないという。
「なぜ?」と聞くと、「泣いたら自分が楽になってしまうから」と。そう思うと、泣けないのだと言う。楽になったら娘に申しわけないと。
誰が悪いというわけじゃない。病気がわるいだけなのに、彼女は娘さんの死を自分の責任と決めつけて、いつまでも自分を許さない。
もう泣いたらいいんじゃないか。いつまでも我慢していなくて、泣いたらいいんじゃないか。
「ママ、泣いてね。お願いだから泣いてね」と、娘さんはずっと前から言っているのじゃないか。
いや、わからないけど、二人の事情は。
涙を封印し、悲しみをこらえ、笑顔だけで過ごしてきたなんてせつなすぎる。大きな悲しみが隠れている彼女の笑顔がせつなかった。
もう泣いたらいいんじゃないか。いつまでも我慢していなくて、泣いたらいいんじゃないか。
「ママ、泣いてね。お願いだから泣いてね」と、娘さんはずっと前から言っているのじゃないか。
いや、わからないけど、二人の事情は。
涙を封印し、悲しみをこらえ、笑顔だけで過ごしてきたなんてせつなすぎる。大きな悲しみが隠れている彼女の笑顔がせつなかった。
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