青春の無茶

 「オレも若いころ無茶をしてなあ。危ない目に会ったこともあるんだよ」と、宴会の最中に遠くを見るような目で語ったお爺さまがいらっしゃいました。


 なにがあったのですか? と聞いても「ふっ・・・」と笑って答えてくれません。きゃー、渋いー。そうなるとかえって気になります。


 どちらかというと、無茶とはほど遠い感じの人でした。はっきり言えば慎重すぎなのかな思っていたのですが、そんな過去があったなんて、ちょっとカッコいい感じ。見直しちゃいました。




 後日、そのお爺さまのお友だちと飲む機会がありまして、「そういえば」と、その「無茶」について聞いてみたのでした。


 「はて、あいつが無茶なんてこと、するかなあ・・・」と考えていましたが、「あ、そうそう、いちどだけ無茶して危なかったことがあったな」と言うので「なんですなんです?」と耳ダンボでお尋ねすると



 「うん。ヤツが若いころな、もうやめろっていうのに大酒飲んでな」


 「ええ、それでそれで?」


 「そう、大酒飲んでモーブレてな、便所で滑べって転んでキンカクシに頭打ってな、出血多量で救急車で運ばれたことがあったんだわ。うんうん、あのときはたしかに危なかった」と、懐かしそうに語ったのでありました。



 青春の蹉跌、いろいろでございます。




uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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