二十歳の赤ワイン

 8月に入ると息子の誕生日があります。
 
 
 甘えん坊で、いつも抱っこされていた息子が、もう二十歳です。
 
 
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 息子がまだまだちっちゃかったころのことでした。
 
 国道ですれちがう白いベンツSLを見て「おお、いいね・・・」と呟いたわたし。その声に気づいた助手席の息子は
 
 「おとーさん。ボクがオトナになったら、かっこいいスポーツカーを買ってあげるね」と言いました。
 
 
 「わあ、ありがとう」とわたしは答え、息子も「うん!」と言いました。
 
 
 でも、そのあとしばらく沈黙がありました。
 
 どうしたのかなと思ったら、ちいさな声で
 
 「でもね、お父さん。車買うとき、いっしょにきてね」と言いました。
 
 「うん、いいよ」と答えましたら
 
 「よかった。ぼく、車のことわかんないから・・・」って言って、それで安心したのか、そのまま眠った息子でした。
 
 
 
 そんな息子に、今日はちょっと奮発した赤ワインを買ってきました。
 
 二十歳のその日、いっしょに乾杯しようかなと思いまして。
 
 
 
 
 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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