期間限定サービス:中村ファイト
これもいつ消すかわからない、大サービス企画
某所で発表され、そのまま絶版で消えるかもしれないエッセイシリーズ その2
「ナカムラ、ファイト!」
今回のテコンドー団体戦の、いちばんチビクラス(25キロ以下級)に我が協会がエントリーしたのは、幼稚園児のナカムラだった。
25キロ以下、30キロ、35キロ、40キロ、40キロ超の5人がエントリーして戦う団体戦であるから、本来ならば勝てる選手を選びぬかねばならない。幼稚園児の白帯びくんでは、ちょっと難しい。
でも、本人は「ボク、出たい」と張り切っていたし、他のメンバーも、ナカムラならだいじょうぶだと言うので出場が決まった。今大会の最年少らしい。
最初にネタばらしをすると、メジャーデビューの彼は、けっきょく一回も勝てなかった。
技術の以前に、体格の差がもろに出た。手足の長さが違うのだ。幼稚園児と小学校三年生なんてのじゃ、こちらの蹴りが届く前に、あちらのパンチをもらってしまう。
しかし、彼はけっして諦めない。
痛くてつらくて、我慢してても涙が流れるのだけれど、勝つために前に前にいこうとするのだ。自分が負ければチームに迷惑がかかることを知っているのだ。
こちらの作戦は、「イケイケどんどん」。作戦どおりの行動だ。
なんどもタオルを投げようと思った。しかし、本人のファイトを信じて思いとどまった。
他の子どもたちも「がんばれー!」「ナカムラー!」と、大きな声を出して応援していた。
判定のあと、泣きながら戻る彼を「よくやったよ、ナカムラ!」と、みんなが賛えた。泣き顔はすぐに笑顔に戻った。
彼はいちども勝てなかったけれど、彼のがんばりが、他のみんなを勝たせてくれた。
全部の試合が終わり、やっと自分のもとにわが子が帰ってきた父親。
「いっぱいほめてやってください」と言ってナカムラを返した。
子どもの試合は、いくつになっても、親は辛い。
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いや、ほんとに。
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