れいぞうこさん

　はい、大好評消えてしまいそうシリーズです。

 

　このコーナー自体もまだしぶとく消えずにがんばっております。今回は、冷蔵庫の話です。

 

 

 

 

「れいぞうこさん」

 

 

　娘が六歳のとき、十年使った冷蔵庫が壊れた。新しいものを買うといったら、娘は大反対。壊れた冷蔵庫がかわいそうだから直して使うというのだ。修理費のほうが新しい冷蔵庫よりも高くなるのだと説明しても納得してくれない。しまいには、「捨てないでー！」と、冷蔵庫にしがみついて泣いている。そんなこといったってダメなものはダメと、半ば強引に冷蔵庫から引き離した。

　翌朝は、娘もあきらめたのか、冷蔵庫のことはなにもいわなかった。ただし、めいっぱいブスッとした顔をしていたけれど。

　さて、午後には業者さんが新しい冷蔵庫をもってきてくれるから壊れた冷蔵庫も外にだしておかなければならない。その準備をしようと思ったら

　「･･･あっ」

 

　午後になり、つつがなく真新しい冷蔵庫は台所の所定の位置に納まった。

　「じゃあ、古いヤツは持っていきますね」という業者さんに「いや、こっちでなんとかするから。ごくろーさん」と答えるわたしであった。

　壊れた冷蔵庫には、ヘタだけどいっしょうけんめい書いた字で「れいぞうこさん、さようなら。わたしはれいぞうこさんのことをずっとわすれないよ。たすけられなくてごめんなさい」と貼り紙がしてあったのだ。

　いまもわが家の裏口に、娘が助けた古い冷蔵庫が置いてある。それを見るたび、やっぱりバカねえと、我ながら呆れている。

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　今現在もあります。