次は・・・
はい、久しぶりの消えてしまいそうシリーズ。
とはいっても、これは消えてしまいそうなエッセイ集に載っているものではなく、新潟日報の夕刊「晴雨計」の第一回目のモノですね。
絵本のタイトル「ちいさな手」の原型かもしれません。
★☆2・3小さな手
夕ごはんのあとの、ほっとしたひととき。
大学生の娘が高校生の弟の手をとり「うん、わたしたちの手はお父さん似だね」と言っていました。そして、二人して「よかったねー」と喜んでます。そのやりとりを聞きながら、「なによ、それ」とやや不満気な妻です。
大学生の娘が高校生の弟の手をとり「うん、わたしたちの手はお父さん似だね」と言っていました。そして、二人して「よかったねー」と喜んでます。そのやりとりを聞きながら、「なによ、それ」とやや不満気な妻です。
「だって、お母さんの手はちっちゃいんだもの」と娘。さらに、「セクシーさが足りないのよねえ」と追い打ちをかけました。そう、たしかに妻はモミジみたいな手をしています。とてもかわいいと思うのですが、セクシーと言うには、やや無理がありそうです。
その会話を聞いて笑っていたら、「おとうさん、わたし、小指の爪がちっちゃいの」と言って娘がわたしの前に手を差し出しました。「どれどれ」と見てみると、細い小指に小さな爪。
それを見ていて、娘が生まれたときのことを思い出しました。
帝王切開で生まれたその日、保育器の中で小さな手を上にあげ揺らしていた娘です。母を探していたのでしょうか。「お母さんは、まだ隣のお部屋にいるからね。もうちょっと待っていておくれ」と、言いながら、娘の手にそっと触れました。
赤ちゃんの手って、とっても華奢なんですね。こんなにも小さな指なのに、そこに爪が生えて指紋もあって、ちゃんと「手」をしていて感動しました。それからは、毎日娘の手にふれていました。退院してからも、ハイハイしてからも、そして、ヨチヨチ歩くようになってからも、娘はわたしのそばにきて、アタリマエのように手を差し出して、そしてつないで歩きました。
いつからでしょう、この子と手をつながなくなったのは。
「そうだね、かわいい爪だね」と言って、そっと娘の手を離しました。次にこの子の手に触れるのはいつだろうと考えながら、この子のこの手が、これからもずっと温かくありますようにと、願いました。
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