サイテー@忘れられてしまいそうシリーズ
はい、今回はひさしぶりの「忘れられてしまいそうシリーズ」でございます。このシリーズ自体が忘れられてしまいそうですけど。
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「サイテー」
風呂のなかで「ボク、またお姉ちゃんにイジメられたの」と息子が泣いて訴えた。保育園の年長から四年間も空手で鍛えているってのに、技ばかりうまくなっても根性がまだまだで、姉とケンカするとすぐに泣く。
もっとも、姉弟喧嘩に得意な空手を使うことをわたしにきびしく禁じられているから、口の達者な姉が勝つのはアタリマエなのかもしれないが。それにしても、空手マンは負けても堂々とした態度でいてもらいたいものだ。父を見ろ父を(負けに慣れているのだ、えっへん)。
息子をなぐさめ、そのあと風呂あがりのルンルン気分で居間の戸を開けたら娘に「もぅっ、サイテーなヤツ!」と唐突に怒鳴られビックリした。態度は大きいけれど、気のちいさいオトコなのだ、わたしは。
だれだれ? サイテーって誰のこといってんの。おとうさんが最低なの? 風呂あがりだからって、パンツいっちょうでウロついているわけじゃないし、ちゃんとパジャマを着ているのに、どうしておとうさんが怒られなくっちゃならないのとウロタエていたら、妻が笑って「ドラマの話よ」と、教えてくれた。
ドラマのなかでサイテーの性格の女の子がヒロインに対してサイテーのことをしていたから、正義感あふれるわが娘はサイコーに怒っていたらしい。
あのね、あくまでもドラマの中で演じている性格なんだからね、本人はきっといい人なんだよと説得するが娘の興奮はおさまらない。
「あんなやつはね、ぜったいにだれも好きになってくれないのよ。あいつを好きだっていってくれる人なんて、もう親しか残ってないからね!」と、怒りはおさまらない。やれやれ。
しかし、うれしい言葉だった。親というのは、わが子がどんなになっても愛してくれるのだと、娘は信じているのだ。
そう、どんなことがあっても、呆れても嘆いても叱っても、わたしたちはおまえたちを愛さずにはいられないのだよ。
おしまい
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