袋の話

  人生には三つの袋があってー、ひとつはおふくろー・・・って、なんか結婚式の披露宴で上司のスピーチにありがちですが、えっと、パーティの話ももう少しあるのですが、今日はちょいとべつのことをお話させてください。
 
 
 
 「袋」が欲しかったのです。
 
 でも、その名前がわからないのですよ。
 
 皆さん、知ってますか、袋の名前。
 
 といっても、なんのことかわかりませんね。
 
 実物はこれです。
 スーツを買うとついてくる、この袋です。
こいつがほしいのに、こいつの名前がわからんのですよ。
 
 じつは、次の日曜日は朝から消防団の春の演習があるのです。
 そして、それが終わったら懇親会が入っているのです。
 消防の服のままお酒を飲むことは内部のルールで固く禁じている我々、飲み会場に入る前には必ずスーツに着替えるのです。
 
 そのため、こんな袋にスーツを入れて運ぶわけですけど、着替えるときはあまり時間がありませんので、ソッコーでここからスーツをひっこ抜き、そしてソッコーで濡れた消防の服やら帽子まで詰めこんでしまうことをくり返していたら、破けちゃったんですねえ。
 
 次の日曜日までに手に入れないといかんなあと思って、ネットで探して買おうかと思ったのですが、こいつの名前がわからんのですよ。名前がわからないから探しようがなく、「ああ困ったちゃん」と小さな胸を痛めていたわたしでございました。
 
 
 しかし、今日、車で走っていて、ハタと気づきました。
「紳士服屋さんにいけばいーじゃん」と。
 
 スーツをこの袋に入れてくれる紳士服屋さんで買えばいーじゃん。
 
 となったら話は早い。
 財布のなかには小銭を合わせて三千円はあるってことを確認し、ちょうど道に面したところに洋服のブルーマウンテン(仮名)さんがありました。
 
 そのお店に入り「いらっしゃいませー!」という声がするほうにまっしぐらに突き進み、清く正しそうなお店の青年に声をかけました。
 
 「名前がわからないのですがあ、スーツ買ったときについてくるぅ、袋を、ください」と言ったところ、二秒ほど間があいたあとに、「えっとえっと、こ、これのことですか?」と、わたしの探していたものを手にして聞くのであります。
 
 「そう、それ、売ってください」と即座にお願いしました。金ならある(三千円だけど)、売ってくれぃ。
 
 青年は、「しょ、少々お待ちください」と言って店の奥に入っていきました。およよ、イヤな予感。青年、ややウロタエてるような気がする。ヘンなのを買いにきたオトコがいるって上司に告げ口でもするのかしらー。売っちゃ法律により罰せられるかしらー。ややこしいこと言わんで金で解決しようぜー金でよー(三千円だけど)・・・なんて思いながら、待つこと数十秒。
 
 青年、本を持って出てきました。
そして、それを広げながら、なにやら見つけたようです。そして、
 「お客さま、まことに恐縮ですがー・・・」と言うのです。
 
 「な、なによ、恐縮ってさ」と思ったところで
 
 「お値段がですね・・・」となんだか申しわけなさそう。
 
 「うん、お値段がどうしたって? 金ならあるよ、三千円」と思いつつ、もしかして、すげー高いのだろうかとやたらと不安になりましたね。三千円で足りなかったら、車に戻って、今日買ってきた「手作り絵本」の紙を現物として渡しちゃおうかなー・・・
 
 「まことに申しわけありません。では、315円いただきます」と、青年。
 
 
 や、やっすー! 脱力系のお値段ざんす。
 
 
 この値段なら10袋買っちゃおうかなと一瞬思いましたが、買ってもきっと邪魔だし、もしかしたらどこかに片づけて忘れちゃうし。と考えちゃうオトナのアタシ。
 
 
 
 そんなわけで、紳士服屋さんで315円の袋を買ってきたという話です。ちゃんちゃん♪
 
 
 この袋の名前は、けっきょくのところわかっていません。どなたかご存じですか?
 
 
 
 
 
 
 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

0コメント

  • 1000 / 1000