謝っておきたい

 謝っておきたい人がいます。
 もう、住まいを遠くに移してしまったそうで、いまはどこにいるのかわからないのですが。
 
 
 一歳年下の男子。
わたしが中一、彼が小六のとき、彼がわたしの弟をいじめたので注意しました。
 
 そのときいつまでも反抗的な態度をとったので、カッとなってわたしは彼の肉体的な欠陥を言葉に出して責めました。
 
 「なんだ、この足曲がりが」と。彼は生まれつきの病気で、足が曲がっていました。
 
 そのときの彼の顔が忘れられません。時間が止まったように、それまで悪タレていた言葉が消えて、静かになりました。彼は下を向き、わたしは自転車に乗って去っていきました。最低ですね。
 
 
 
 思いきって彼の親戚にそのことを話し、彼の所在を聞いたのですが、「ま、いいがね」と笑顔のままで、それ以上のことを知ることはできませんでした。
 
 「たいせつなあなたへ」なんていっちょまえでえらそうなこと書いていますが、じつは最低なわたしもわたしの中にいっしょに棲みついているんです。
 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

0コメント

  • 1000 / 1000