泥のステージ:忘れられてしまいそうシリーズ

「泥のステージ・三条の水害」・・・三条が水害にあったときの消防団レポートです。これだけ読むと中途半端ですね。これの前にひとつブーたれたエッセイがあって、その続きなんです。
 
 
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 言葉では足りない。

 お昼は炊きだしのオニギリを三個いただき、それを即座に食べつくした。食べ終わっても腹がへってる。もっと食べたいし、もっと食えと言われるけれど、あんまり満腹になっては次の仕事への意欲が衰えるかもしれない。腹をへらしていたほうが気合が入る。
 
 ちょっと時間をもらって、ご飯を食べたあとに中ノ島町を歩いてみた。
 
 どの家も、例外なく被害にあっている。歩道には水を吸った家具が並べられている。独特の臭い。家の人たちと一緒に、個人ボランティアの人たちが一生懸命に片づけをしている。
 
 ボランティアの人たちは、胸にガムテープが貼られ、そこに名前が書いてある。止むにやまれず、遠くから個人でやってきている人が大勢いるのだ。組織として派遣されているから「しょうがないな」という気持ちできて、そんでもって被災者にぶーたれている私は頭が下がる。こんな不純な気持ちが敏感に被災者に伝わって皮肉を言われるのかもしれないな。
 
 町には人があふれている。自衛隊の車もがんばっている。重機の音も休みなく聞こえる。人が動く。機械が動く。止まらない。疲れきっているけれど、いま止まってしまったら腐ってしまう。泣くのは、もうちょっとあとになってからだ。被災者には泣いているひまがない。
 
 堤防の決壊場所の真下にあるお寺がなくなっていた。墓石が倒壊している。家が流れている。車が潰れている。なにか巨大な生きものが這いずっていったような風景。すべて押し流されて、そこには広場ができてる。泥のステージができている。みんな、負けるな。
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uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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