わすれそうな散歩
えーと、忘れられてしまわれそうシリーズのニューバージョンです。
BSNラジオで放送してもらった故郷散歩のエッセイも、ときどき紹介していきたいと思います。
第一回
「わるい性分」
わるい性分で、人の目を見てお話しすることが苦手です。相手と目が合うと、「すっ」と目を逸らしてしまうのです。いいクセではないと自覚しているのですが、どうにも治りません。
じつは、相手の目を見ることというよりも、相手に目を見られることが苦痛なのです。あるとき「それは、自分の目に自信がないせいかもしれない」と思いました。わたしの目は、いつもつぶったみたいに細いのです。エッセイの挿し絵でわたしの顔が出るときは、目の部分がいつも一本の線で描かれています。それがまた、悲しいことによく似ているのです。
それで、少しでも目を大きくしようと、当時高校生の娘に、一重まぶたを二重にさせる化粧品を買ってきてもらったことがあります。しかし、使い方をまちがえたようで、マブタ全体に糊がくっつき、目が開かなくなって大騒ぎ。それ一回だけでやめました。
それからは、相手と目を合わせてお話しができないのは、これはもうわたしの個性として認めてもらうしかないと思うことにいたしました。初めての人には、「スミマセン。わたし、目が合うと視線が泳ぐんです」とお断わりしています。
しかし、話しながら目が泳ぐといということは、なんとなく「ワタクシ、嘘ついてます」という印象を与えることも否めません。
じつは先日、ある駐車場で空に浮かぶ雲の写真を撮っていました。すると、いつのまにか後ろに現われた若いお巡りさんに「このあたりに車上荒しが出ているのだが、あなたはいまなにをしていたか」という主旨の質問をされてしまいました。ええ、わたし自身が疑われている感じがありありでした。それであわてて免許証を見せたり名刺を渡したりして身の潔白を主張するのですが、いまひとつ信じてくれません。それはわたしの目が泳いでいるからウソをついていると思われているのですね。
それで「嘘はついていません。わたしは目を合わせるのが苦手なだけなんです!」と、強い口調でお巡りさんの顔を見て訴えたのですが・・・、ほら、そう言いながら、またも目が泳いで怪しそう。
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