呼び止められて

 昨日、家のそばを歩いていたら、「オトーさん!」と呼び止められた。
 声の主は一人暮ししている90歳のおばあさんであった。
 
 念のために書いておくが、オトーさんと呼ばれたからって、わたしはその人のオトーさんではない。
 ま、かんちがいすることもなかろうかと思うが、なかには「あらやだー、フジタさんってすっごく大きな娘さんがいらっしゃるのねー。スミにおけないわーこのこのー」なんてコメントをくれる人もいそうだし。
 
 さて、そのおばあさん、なんの用事かと思えば「うちのスズムシ、まだ鳴かないんだけど」ですと。
 
 まあ世界的にみたらどってことない問題だけど、おばあさん的には大問題なのかもしれないな。ちなみに、うちのスズムシは一週間も前からいい声で鳴いてる。
 
 
 おばあさんちのスズムシのエサは、わたしがホームセンターで買ってきてあげたのだからうちと同じもの。だから、エサのせいではない。
 
 「キュウリかナスのような水気のある野菜入れてあるか?」と聞けば「うちはキュウリとナスと、それからメロンも入れている」という。
 
 なんと。ニンゲンのわたしですら今年はまだメロンを食べていないってのに。
 
 ま、メロンまで食ってるんなら大丈夫でしょうってことでその場をあとにしたのであるが、今朝会ったら「鳴いたよー」って喜んでいた。メデタシメデタシ。遅く鳴きはじめたぶん、長いこと鳴いてくれることだろう。
 
 
 
 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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