「講演会は緊張します」

わシリーズ
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「講演会は緊張します」
 ありがたいことに、モノカキのほかに講演のお仕事をいただいて、月に何度かお話しさせてもらっています。


 エッセイストですから、書くことはプロとしての自覚を持ってやっているつもりですが、喋るほうはシロウトの自覚たっぷりです。


 そう。シロウトのわたしがボソボソと喋っただけでお金なんぞをいただくことはまことに心苦しく、ここはやっぱり潔く、いただいた「謝礼」の袋をその場で開いて交通費だけを受けとって、あとはすべてあちらにお返し・・・したい気持ちはヤマヤマなのですが、いまはまだ経済的な理由があって、それができないでいます。


 でも、気持ちとしてはほんとうにそうしたいのです。いま大学生の子どもたちが独立し、そして宝くじが当たって生活が楽になったアカツキには、ぜひそうさせていただきますと、いまここで宣言しておきましょう。
 じつはわたくし、あがり症のくせに出たがりなのです。講演会のような華々しい場所に出たくて出たくてしょうがないのです。ようするに目立ちたがりやなんですね。ですから、そんな依頼の電話がかかってくると、即座に「ありがとうございます。喜んでお引き受けいたします!」と元気な声で言うのです。


 しかし、講演会当日の朝になると急に弱気になって「だいじょうぶかなあ。大ぜいのお客さまの前でちゃんと話ができるかなあ。やっぱり断わっておけばよかったかなあ」と悩んでしまい、「いまここで盲腸炎になったら堂々と休めるよなあ。お腹痛くなってくれたらうれしいなあ」なんて情けないコトを思っているのです。


 そして、マイナスイメージばかりがどんどん浮かんで気分は暗くなり、もう心配で心配でご飯がたべられなくなるのです。


 そんなわけで、本番ではいつも下を向いて演壇のところに行き、「みなさん、こんにちは」と弱々しい声で挨拶で講演をはじめます。


 挨拶のあと、心を落ちつけるために横に置いてある水を飲みます。途中、なんどもなんども飲みます。話す内容に自信はありませんが、講演の最中に飲む水の量だけは、国内のトップクラスであろうと自負しております。
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注)さすがにいまは当時よりふてぶてしくになっております。

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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