サヨナラの扉

わ(忘れられてしまいそうなエッセイ)シリーズ
 
 
 「サヨナラの扉」


 朝早く、娘を新潟駅まで車で送った。
 
 進学のために上京する友だちをお見送りだ。遅れないようにと早めに家を出たぶんだけ、予定よりも早く駅に着いた。
 
 「もうちょっと車の中にいるよ」と、娘は言った。
 
 「一人で待っているのは寂しいもん」。
 
 夜が明けたばかりで、目の前の風景にはまだ青みがかかっている。車の中で、私も娘も「ぼーっ」と時間の過ぎるのを待っていた。
 
 すると、駐車場に一台の車が入ってきた。
 白い小さなファミリーカー。私たちのそばに止まって、そこからお父さんとお母さん、そしてうちの娘と同じ年頃の女の子が降りてきた。
 お父さんがトランクから大きなバッグを出し、それを女の子が受けとろうとしたのだが、しかし、お父さんは黙って自分の肩にかけた。それから三人は、ゆっくりと改札に続く階段をのぼっていった。
 
 「あの子も出発するんだな」と、私。
 
 お父さんとお母さんが二人で送りにくるんだもの。きっと遠くにいくのだろう。 永久(とわ)の別れじゃないけど、会おうと思えばすぐに会えるだろうけど、それでも三人の背中は、とても寂しそうに見えた。
 
 娘はその親子の後ろ姿をじっと見つめ、そしてぽつりと寂しい声で言ったのだ。
 
 「みんな、いなくなっちゃうんだね・・・」と。
 
 少しの沈黙・・・
 
 「・・・うん、みんないなくなっちゃうね。・・・でも、サヨナラを嫌がってばかりだと、その人の新しい出会いを邪魔することになると思うんだ。新しい出会いのために、サヨナラは必要なんじゃないかな」
 
 
 娘は黙って聞いていた。
そして、「じゃあ、時間だからいってくる」と言って、娘は車から出ていった。
 
 
 早足で階段をのぼる娘を見つめながら、いつかくる娘の旅立ちを想った。
 
 
 
 *********家族っていいなあPart2より
次のステージに進む季節ですね。
 
 
 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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