痛み止めが効かなかった 最終回のひとつ前
入院の少し前、歯医者さんで治療するとき麻酔をしたのですが、効きがとてもわるくて困りました。先生が「フジタさん、大酒呑みですか?」と聞くのですが、そのころは体調が悪くてほとんどアルコールは摂取していませんでした。
効きのわるい麻酔薬を使っているのかなと思っていたのですが、じつは痛み止めの飲みすぎでそういうものが効かない体になっていたのかもしれません。
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手術室で二人の先生が「・・・ちがう」と言っていました。
なにがちがうんです?・・・と尋ねても、「あ、いや・・・」という曖昧な返事。そして、また火花が出るような痛み。再びメスが入り、傷口がさらに広がりました。
体内に感じた水圧で、おなかの中を洗っていることがわかりました。
終わるまで一時間くらいだったでしょうか。
病室に運ばれたわたしの体は、ずっとブルブル震えが止まりません。
「胆管が外れ、体内に胆汁が漏れていました。それが内臓を消化し腹膜炎を起していました」と告げられました。
「なるほど」とは思ったのですが、そんなことより、麻酔の効かない手術が終わってくれたことが、わたしはなによりもうれしかったです。
気がづけば、わたしの体には何本ものチューブと電線のようなものが繋がっていました。そして、ベッドの横には24時間動いている小型のポンプも設置されました。漏れている胆汁を外に出す装置です。
半身麻酔、しかもしっかりとは効かない麻酔では、応急処置のような手術しかできなかったとのことでした。
病室で「この種の腹膜炎は激痛なのですが、よく我慢しましたね」と先生は言いました。
しかし、我慢したんじゃなくて、我慢させられたんです。そう言いたいところを言わずに我慢するわたしはオトナ。
そのとき、わたしの生命力はかなり落ちていたと思います。
ただでさえ少なくなっていた体重がさらに下がり45キロとなりました。
ちなみに、いまは68キロですから20キロ以上少ない状態です。
体内に刺さる何本ものチューブ。
その一本をぐいぐいと動かし中を探る治療がとんでもなく気持ちわるく、うめき声が出ました。
その後、腹膜炎の「激痛」こそなくなったものの、それと同じ種類の痛みはずっと続いていました。
わたしは、ある予感を抱きました。
「死」
オレ、このまま死んでいくのかな。
ここで死んだら後悔がいっぱいだな。仕事を理由にして幼い娘と遊んであげていなかった。そしてあげくに体をこわし、こんなざま。オレって家族より会社の上司のほうがたいせつだったんだろうか。ここで死んだらバカだなと。
結論を急ぎますと、その数日後にまた手術をしました。二週間に三回の手術です。
こんどは全身麻酔で念入りに治療です。幸いなことに、全身麻酔はしっかりと効いてくれるのです。
妻に「これで最悪の事態は脱しました」と告げられたそうです。
次回、最終回となります。
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