万葉人のカラー:セピアの世界なんかじゃない
昔の時代を想像するとき、わたしはその映像を、白黒で思い浮かべてしまう。
昔の人たちはみな色のない白黒の世界に生きていたように思えるし、無声映画のコマ送りのように、パタパタと動いている様子を思い浮かべてしまう。
しかし、あのころもフィクションの世界ではない。
アタリマエなことだけど、みんな今と同じ、人として生きていた。
万葉集のころ・・・千何百年も前の人だって、ちゃんと色付きの世界に住んでいた。
いまのわたしたちと、ほとんどおなじ顔立ちで生きていたろうし、いま遠くに見えている山々の姿だって、ほとんど同じ色と同じ形でそこにあったことだろうし、海は海のままだったろうし。そこに沈む夕陽は紅かっただろうし、波の音も川のせせらぎも、いまと同じだったろう。
その当時もウグイスはウグイスの色(茶色っぽい。ウグイス色ではない)だし、白い花は白い色だし、紅い花も黄色い花もムラサキの花もそれぞれその色だったわけで。夜空にはいまと同じような星があったし、月はいまと同じ周期で満ち欠けしていたのだ。
そして、あのころの人たちだって、いまのわたしたちと同じように考え、思い、生きていた。
文明の利器はいまほどなかったけれど、それはまだ積み重ねが不足していたわけで、頭がわるいからじゃない。同じように、わたしたちの世界は過去から積み重なってできてきているわけで、けっしてわたしたちの頭がいいわけじゃない。
みんな実際に、そこにたしかに人がいた。
そして、あのころの人も、いまと同じように恋をしていた。
万葉集の恋の歌を読むと、とても「人」を感じて心に響く。
あのころの人たちも、今の時代と同じように、色付きの恋をしていたのだなあと思うと愛おしい。
万葉のカラーを、もっと感じてみたいと思った。
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