ミカンを食った

 母を乗せた救急車が交差点に入るとき、「救急車が通ります。道を空けてください」とアナウンスした。そのまえに、ほとんどの車が止まって道を譲っている。



 皆さんもお急ぎのことがあるだろうに、誰一人不満のクラクションを鳴らしもせず、ありがたいと思う。道交法以前の、善意の行動であろうと思う。





 そして救急車はそこを通り過ぎるときに「ご協力ありがとうございました」とひと声かけてから過ぎていく。



 救急車だからアタリマエだという態度ではなく、道を譲ってくれたことに感謝を込めて。



 日本はなんと素晴らしい国か。



 カーテンの隙間から外を見て、頭を下げた。



 ありがとうございます。







 どうしようもないこともあるだろう。

諦めなければならないことも、あるだろう。



 でも、できればみんなが治りますように。

元気になりますように。笑顔になれますように。



 この老夫婦が幸せでありますように。

おばあさんが歩けるようになりますように。



 なんて、いい人ぶってみたくなる、それが病院。





 家に帰り、ミカンを食った。

 すこし寒いな。










uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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