幻聴から

 ずいぶんと前から右の足首が痛く、親指側で地面を蹴るような走りがしにくい。



 だから走らないで安静にしていればいい・・・のであるが、走らなくても腹は減る。腹が減ったら当然食べる。



 諸般の事情で体育館を走ってきた。

 右の足首を使わないように走るのはなかなかメンドくさい。実際にはそれでも足首は動いてしまうので、走ったぶんだけ足も痛む。30分かけて3キロほど。超ノロノロで走っていた。



 不思議なことに、その間に二回電話の呼び出し音が聞こえた。



 いや、電話はロッカーのなかにある。だから音がするわけはなく、幻聴である。



 一回目は「おや?」と思ったが、聞こえるわけがないのだからと思ってほっといた。



 そしてその数分後、また聞こえてきた。なんかおかしい。





 まさかと思ったが、走るのをやめ、念のためにロッカールームに戻ってスマホを見たら、着信ありだ。



 それも二回。



 妻からだった。今日は、仕事が休みで娘と一緒に実家に行くと言っていたのだが・・・





 イヤな予感で妻に電話をしたのだが、出ない。

 留守番サービスに繋がってしまった。どうなっているんだ。不安が高まる。





 ラチがあかないので娘に電話した。



 出た。



 そこですべてがわかった。



 娘が朝起きたら背中が痛くて動けなく、もしかしたらギックリ腰だろうかと思って心配した妻が、わたしのところに電話をしてきたようだ。電話はかけるけれど、携帯しない携帯電話の妻であるから、こちらがかけても通じないことがよくある。



 娘の背中はいまも痛むけれど、なんとか動けるらしい。



 痛み止めを飲んで様子を見るとのこと。娘も実家には行きたいから、痛みを我慢して行くそうだ。まあ、行けるくらいならそれほどでもあるまい。



 たしかに聞こえた電話の呼び出し音。

 不思議なわりに、たいしたことがなくてよかった。

 






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