スリッパ

 ここに猫の絵が描かれた一枚のスリッパの写真がある。



 なにをしているとこかというと、スリッパが戸に挟まっているところである。

 扉の先はトイレ。

 そしてこいつはトイレのスリッパ。



 じつはこれは、スリッパの意思ではない。



 

 爺ちゃんがこれをはいてトイレに入り、ミッション完了の後、バックで脱出。



 そのとき、片っぽうだけがうまく脱げずに、途中までくっついてきたと思われる。



 それでこいつが挟まれた。



 スリッパが挟まっているだけの不自然な扉の開きは、とくに気にならず、爺ちゃんそのままベッドに行った。



 哀れなスリッパは、わたしに発見されるまでの数時間、ずっとこのままだった。





 今日、はじめての往診。

 じいちゃんは、オシッコの管が入っている生活がいやだからと、一刻も早く前立腺の手術をしたいと先生に希望した。



 しかし、なかなか思うような結果が出難い手術だとのこと。



 じいちゃん、ショック。

 わたしも初めて知ったのだが、いわゆる前立腺の手術って、前立腺を全部取ってしまうんじゃなくて、尿道を狭めている部分を削って広くする手術なのだそうだ。



 図らずも、この扉と柱が前立腺で、そこに挟まれているスリッパが尿道であるな。





 と、思いがけずいい着地点を見つけて、ほくそ笑みながら本日のブログを終える。




uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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