赤塚セツさんとウッズという名の犬のこと。

 「さあさ、正座なんかしていないでお楽にしてくださいよ」と言われたわたしは、正直、かなりビックリした。



 赤塚セツさんと初対面の挨拶をし、そのあとざっくばらんに雑談をしていたときの言葉だ。





 「えええっ? 見えるんですか?」



 「見えませんよ、なんにも」



 「見えないのに、わたしがいま正座しているって、よくわかりましたね」



 「声の調子とか、聞こえてくる場所とか、そんなのでわかるんですよ」





 すごい。

 目が見えなくなったぶん、ほかの感覚が鋭くなっているんだ。



 そこで、遠慮なく足を崩して、わたしの隣で寝ているゴールデンレトリバーのウッズの頭を撫でた。

 その手をウッズはペロッとなめた。



 ウッズは、うちのあずきと同じで、人の手や顔をなめるのが好きだ。



 わたしが「ごめんください」と玄関で声をかけたら「わーい、お客さんだー♪」という感じで突進してきて「遊ぼー遊ぼー」と体をくっつけてペロペロなめた。





 赤塚さんは、「にいがた・盲導犬ハーネスの会」の会長をしている。



 そう、じつはウッズも盲導犬である。



 ちなみにハーネスとは、犬の胴体に装着する胴輪のこと。



 ハーネスを外した盲導犬のウッズは、ほんとにヤンチャな犬である。甘えん坊だし好奇心旺盛だし人間が大好きだし食いしん坊だし。うちのあずきとなんら変わらない犬である。



 それがいったんハーネスを付けると、優秀な盲導犬になる。



 わたしの中で、盲導犬に対するイメージが変わった。



 ここで知り合ったのも縁。

 これからしばらく盲導犬の密着取材をしてみようかなと思った。


uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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