何十年ぶりだろうかこの痛み

 もう、最後はいつだったのかも思い出せないくらいむかしのことだ。



 何十年ぶりだったろう。



 思いがけずに、歯を抜かれた。



 いや、抜かれたと言っても強制的にやられたわけではない。



 合意の上だ。



 昨日書いた歯の状態を歯医者さんで話し、根っ子に刺さっていた差し歯を抜いて調べてもらったら、なんと根っ子の土台ごと折れていた。どんだけの衝撃だったんだろう。



 まだわずかに根っ子は残っているのだが、それを使って新たな差し歯をするにはムリがあるそうで、「抜きましょう」ということになった。抜いて、傷口が治ったらブリッジなりで処置しましょうと。



 というわけで、心の準備をしていなかったのに急に歯を抜くことになった。どよーん。



 抜くこと自体は麻酔が効いているので痛くはなかった。



 しかし、結果的に痛くなかったとしても、その処置の間じゅう「急に襲う痛みがあるんじゃないか」と恐れおののいているわけであり、ずっと肩に力が入りっぱなしだった。



 ときどき「いかんいかん」と思って体の力を抜くのだが、その直後にまた力が入る。



 皆さんご存じのように、「痛かったら左手をあげて教えてください」と言われたって、実際に左手をあげても「はい、痛かったですねー、もうすぐですよー」とかなんとか諭されて、なんら解決されることはない。だから、そんな恐怖もあり、一時も休めない。



 また、下アゴがかなりの力で下に押されていたので、アゴが外れないようにと力いっぱい耐えていた。どうして抜くのに押されるんだろう。根っ子の中にドリル状のモノでも入れているのだろうか。そして引っ張りだす作戦だろうか・・・なんてことを思いながらも確かめることもできず。



 この間は5分くらいだったのかもしれないが、かなりの時間耐えていた気分であった。



 押したり引いたり、基本的に体に心地よいことをしているわけではない。



 麻酔があるからなんとか耐えているけれど、その麻酔が切れたらかなり痛くなるのだろうなという予感はあった。



 だいたいわたしは、このての痛みに弱い。もしこれが拷問であったら、わたしはすぐに白状する。いや、やってなかったことでも「スミマセン、わたしがやりました」と言ってしまう自信がある。



 ほんとは歯医者さんの帰りに遠回りして父の薬をもらいに薬局に寄ろうかと思っていたのだが、もう気力がなかった。



 結果的に、それがよかった。



 ヘロヘロで家にたどり着き、しばらくしたら麻酔が切れてきて、抜いたところが猛烈に痛みだした。



 うわあ、なんてこったい。歯を抜くってのはこんなに痛いことだったんだろうか。小学校のころはよく抜けていたけどあれは乳歯だから痛みが少なかったのか。うわあ、痛い痛い。ズッキンズッキン。鼓動に合わせて痛みだす。



 スミマセン、みんなオレがやりました。犯人はオレです。だからこの痛みをとってくださーい。



 こうなったら痛み止めの副作用で胃が痛くなろうが下痢になろうがかまっていられない。空きっ腹だったので、プリンだけ文字通り飲みこんで、歯医者さんからもらってきた薬を飲んだ。



 ああガンバレ痛み止め。オマエが効いてくれたらこの先10年間、朝昼晩とオマエを飲み続けるからさー・・・と、体にスッゲーわるいような約束をしてしまいそうになりつつ「あ、うそうそ」なんて一人ツッコミをしながらこれから耐える。



 ただいま痛みは現在進行形ゆえ、乱筆乱文許してください。なんかください。







 特別ゲストの妖精プリンちゃんでーす。






uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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