風呂に求めるもの

 風呂には、わたしは深さを求める。



 ホテルの風呂はちょっと浅すぎだ。寝ころんで入るにはいいのかもしれないが、わたしの趣味には合わない。



 いや、趣味とは言っても子どものころの趣味で、いまはやっていないんだけど。ほんとだってば。



 ・・・なにをって?



 え、えっと ( ´ ▽ ` )





 子どものころ、「風呂は肩までしっかり入れ」と親に言われていた人も多かろうが、小学校のころのわたしは、肩どころか頭までスッポリ入っていたさ。偉いだろ。





 風呂には水中メガネは必須。風呂は遊び場なのだ。



 ホースを咥えて潜ってスイトンの術を実践してみて、風呂の底まで潜ってしまうと水圧で息がしにくいことを発見した。



 バケツを被ったまま潜ってみると、そのままでは浮力が大きすぎて風呂の底まで沈めないことに気づき、中の空気を出してギリギリの容量で風呂に潜り、バケツの中の空気で快適に呼吸ができることを知った・・・が、1分もするといくら息をしても息苦しくなることも発見した。



 ある冬の日、父母の寝室にある目覚まし時計を風呂場に持ちこんで、何分入っていられるか挑戦したことがある。基本的には熱いところに5分も入っていれば体じゅうホッカホカになることがわかった。



 また、目覚まし時計は水に弱いことも後日わかった。しっかり錆びさせて、親にこっぴどく怒られた。



 その後は、風呂場に目覚まし時計の持ちこみは禁止された。



 時間を知る手段がなくなったので、家の前を車が2台通るまで風呂に入っていようルールを決めて、追い焚きをしたまま車がくるのを待っていた。過酷な修業であった。



 車の台数は、今と比べて十分の一くらいかもしれない。

 もともと車の数は多くはないが、台風かなにかでぜんぜん車の通らぬ夜があった。



 待てども待てども車が通らない。わたしも意地になって耐えていた。

 そして車が2台通ったときには、ほとんど煮えたような状態で風呂から出た。



 立ちあがったとたん目が回り、フラフラで脱衣場で寝た・・・というか、意識不明。



 熱々の体はすっかり冷えて目が覚めて、ブルブル震えながら服を着た。





 それに懲りることもなく、今でも深い風呂が好きだ。






uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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