スペシャルパソコン

これも9年前シリーズエッセイ


「スペシャルパソコン」




 通信販売で注文していた小型のマザーボードが届いた。9インチのカラーモニターとFDDドライブやCPUはすでに届いている。


 そして、中身を全部取り出したジャンクのマックSE30もある。もちろんハードディスクだってある。工具もすべて揃えた。けっこうな出費だった。でも、やめられません、とまりません。
 じつは、むかしの一体型コンパクトマックのデザインが好きだ。あの愛らしい姿にまいっている。歯が丈夫なら、食べちゃうくらいカワイイ。


 しかし、いかに愛くるしくとも仕事に使うにはちょっとばかり非力すぎる。いまどきの日本語変換が使えない。カラーで絵が描けない。かといって買って飾っておくだけってのはわたしの主旨に反する。モノってのは、使ってナンボだ。
 そして、それにどちらかといえばOSは使い慣れたWindowsのほうがいい (いや、マックのOSがわるいというんじゃないですよ。ただ、Windowsの経験のほうが長いだけってことで)。


 うーん、困った困った。
 と、悩んでみたらひらめいた。コンパクトマックの中にウィンドウズパソコンの中身を入れちまえばいいじゃないか。「なーんだ、かーんたん」という結論が出た。思いついたら即実行。ヘソクリをはたいて先程のモノをインターネット通販で手に入れたのである。
 中身をぜんぶ取り出したクラシック2に、新品の9インチモニターを分解し取り出したブラウン管を取り付ける。


 中の狭い隙間にFDDドライブとマザーボードと電源を押しこみファンをつけて作業完了。こうやって文字にすると簡単だけれど、実際は金切り鋏やらノコギリやらを駆使してそうとうの時間がかかったのだ。おまけに手は擦り傷だらけで、見るも無残ざんす。
 意を決してスイッチを入れたら、ジャーンと音をたててWindowsが起動した。やったー、これってすごいことかも。世界でただひとつのパソコンができあがったんだもの。


 ちいさなボディにちいさな画面。そこにカラーでWindowsがちゃんと起動している。ちょっと目が疲れそうだけど、そんなことかまっちゃいられない。こんどからは、このマックみたいなWindowsで仕事をするのだよ、るんるん♪
 こういうすばらしいことをなしとげたら、とりあえずは自慢しなければならない。


 というわけで、女房を部屋に呼んだ。


 「ほら、見たまえ。これが世界でただ一台の優れモノのWindowsコンパクトマックうににんスペシャル98であるぞ」と宣言し、マウスをいじって自慢タラタラと女房に見せているうちに、なにやらモノの焼ける臭い。パソコンの後ろからそこはかとなく妖しい紫の煙が見えたと思ったら、プチッと画面が消え、それきりウンともスンともいわなくなった。


 あらー。
 「アナタってば、パソコン作ってたと思ったらオーブンレンジを作っちゃったのね」と女房は笑いだし、いやー、人生楽ありゃ苦もあるさドンマイドンマイと、動揺してなんだかわからん言葉を返しつつ、じつはワタクシ、タダイマ心底落ちこんでこれを書いているざんす。
 こんな時代、変テコなパソコンが欲しいというお客の要望を聞いてくれるオーダーメイドのパソコンショップがあってもいいと思うがいかがなものだろうか。ぜったいに売れると思う。少なくともわたしは買う。膨大な時間と莫大な資金(当家家計費比)を費やし、ブラウン管つきオーブンレンジを作りあげて泣く哀しきシロウトをなくそうではないか。






uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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