サンクス

わシリーズ
 
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「サンクス」
 
 抱っこされるのが大好きだったわが子たち。幼いころは二人とも、私の腕の中でスヤスヤと眠ってくれた。
 
 その寝顔を見ながら「幸せになっておくれ」と語りかけた。もしも子どもたちに不幸が訪れそうになったときは、私がかわりになって守りたいと思った。


 自分を盾にしてもわが子を守りたいと願うこと、それが親の本能だと、親になってから気がついた。
 
 しかし、そう願っていても、守りきれないときがある。
 誰が悪いんじゃない、ただ運命としかいえない出来事がある。それは突然の病気だったり事故だったり。
 
 しかし、たとえそれが自分のせいでなくても、親は、自分自身を激しく責めるのだろうなと、親になってから思うようになった。
 
 子どもがあまりにも親を信じきり、すべてを委ねてくれるのに、その子を守りきれなかったことで、親は自分を、責めて憎んで悲しむのだろうと思った。
 
 そのときの苦しみを察すれば、子どもに対する悩みなんてのは、ほとんどの場合がチッポケなものに思えてくる。


 子どもたちが、いま「生きている」という幸せを打ち消してしまうような悩みって、あるとしたら、それはいったいなんだ?


 成績? 素行? 世間の評判?
 
 子どもの誕生日には「ハッピーバースデー」のメッセージとともに「大きくなってくれてありがとう」と、子どもに言っているというお母さんがいた。
 
 親の正直な気持ちを聞かされた子どもは、自分の存在を喜んでいる人がいることを確信する。
 
 子どものために流す涙は、これからもうれし涙だけがいい。それは欲張りな願いだとわかっているけれど、だって親だもの、欲ばったっていいに決ってるだろう。

 
 
 
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 ちっちゃくて泣き虫で、いつもわたしにくっついてたあの息子が、
 今日で22才になりました。誕生日おめでとう。
 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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