手作り絵本
わシリーズ
2年前に書いたエッセイです。
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「手作り絵本」
「できたー!」と、まだ酸っぱい糊の匂いのする絵本を手にしながら「すごいなあ。ほんとにこんなにいっぱいできちゃったんだねえ」と感激したのは、いまから一月半(ひとつきはん)前の7月のことでした(註:平成21年7月)。
じつは、今年の春から仲間たちと絵本づくりを始めたのです。わが子が生まれたときの喜びを書いた手作り絵本、『ちいさな手』です。
出版社も製本所も通さず、自宅で印刷した紙を折って縫って糊付けしてと、すべて自分たちの手作業で作りあげました。
最初の見本は、コピー用紙に印刷してホチキスで止めただけのものでした。とても絵本とは呼べないシロモノでしたが、それを読んでくれた何人かが「いいですね、これ」と言ってくれたので、「よーし!」と作る気持ちになれた本です。
ゼロからの出発でした。ほんとになんにもわかりません。試行錯誤のくり返しで失敗ばかりでした。それでもだんだんと手伝ってくれる仲間が増えていき、徐々に形になっていきました。
一生懸命のあまり、仲間たちでケンカをすることもありました。みんなよいものを作ろうと思っているから、ヘタな妥協がありません。そしてまた、いつのまにか仲直りして夢中で作っていきました。
いつしかみんな、絵本のことを「わたしたちの本」と呼ぶようになっていました。藤田市男の本ではなくて、「わたしたちの本」なのです。
わたしは気づかぬふりしてそれを聞いていましたが、本当は涙が出るくらいうれしかったのです。絵本をまるで自分のことのように思って作ってくれているんだなあと、心から感謝したのでした。
大勢の人たちのお世話になってできた絵本です。直接手助けしてくれた人はもちろん、このプロジェクトを知って「完成が楽しみです。応援しています」と言ってくれた人たちの声も忘れられません。
最初にできた100冊は、おかげさまで全国に旅立っていきました。その後も少しずつ注文が入り続け「わあ、忙しいぞぅ」と、文字どおりのうれしい悲鳴をあげながら、また仲間たちと、ゆっくりゆっくり作っているところです。
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いま「ちいさな手」は1,120冊。「たいせつなあなたへ」は227冊完成し、それらが世界中に旅だっていってます。
「ちいさな手」を抱いたまま眠る、ちいさな手
スタートはここ。くまくまハウス。
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