母の入院:わシリーズ

わシリーズ
「母の入院」(2年前の話です)
 
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 この原稿は、ある病院(猫山宮尾病院)の一室で書いています。じつはいま、母がヒザの手術をしているのです。パソコンのキーボードを叩きながら、母が手術室から戻ってくるのを待っていたところです。


  人工膝関節全置換術(じんこう ひざかんせつ ぜん ちかんじゅつ)という、その名前の通り、ヒザの関節の骨を人工のものに取り替える手術です。


 その年齢でいまさら手術なんかしなくてもいいのにと言う人もいました。いまさらトシヨリを苦しい目にあわせなくてもいいじゃないかと言うのです。


 母は先日七十八歳になりました。たしかに若くはありません。しかし、この年だからこそ、二十年も前から痛(や)んでいた母のヒザを、痛みのない元の足に戻ってもらいたいと思うのです。


 これまでは、このての手術は「入院期間が長すぎるから」とあきらめていた母ですが、いまは二週間の入院とリハビリで退院できると聞いて、思いきって手術を決めたのでした。
 
 
 と、ここまで書いたところで、母の手術が終わったと連絡がありました。予定よりちょっと時間がかかってしまいじつは心配していましたが、手術は無事に成功です。このあと二週間のリハビリをして、母は痛みのない足に戻るのです。何十年も無理をして働いてくれた右足のヒザの骨に感謝しつつ、今日でお別れとなりました。お疲れさま。
 
 
 明けて今朝、母の寝顔を見ながらこの原稿の続きを書いています。痛み止めが効いているようでよく寝ています。


 いままでは、口だけ達者で足腰はヨボヨボの母でしたが、これからは、口も足腰も達者なスーパーオババになるのです。その姿を想像し、やや恐怖を感じないわけでもありませんが、でも、弱って泣いている母よりも、やかましくても元気なほうがいいですね。
 
 いつのまにか目を覚ました母は「こんなに朝早くから仕事してるのかい。たいへんだね」と声をかけてくれました。


 その母の顔色は昨夜と比べてとてもよく、術後も順調なようです。

 「母さんのことを書かせてもらっているよ」と言うと、母は「ふふっ」と笑って「いいことを書くんだよ」と言ったのでした。

 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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