ちか子さんの独り言1
■ちかこさんの独り言1
わたしの友だちに、ちか子さんという人がいます。
彼女の言葉を「たいせつなあなたへ」に収録しました。初版では「お母さんの独り言」というタイトルです。
どうぞ読んでください。
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ほんとはわたし、赤ん坊なんて嫌いだったんだ。
赤ん坊なんて言葉が通じないから何考えてるかわかんないじゃない。
自分でなんにもできないヤツだし、気にいらなければ泣けばいいと思っているでしょ。赤ん坊なんて、うるさいばっかりでさ。
よだれのついた手で、なんだってさわろうとするし、どこでだってかまわずウンチしちゃうし。
だから、子どもなんてわたし、永遠に好きになるはずじゃなかったの。
それなのに、アナタを授かった日から、一気に事態が変わったんだ。もう、うっそーってくらいに変わっちゃったね。
どうしてこんなにうれしいんだろう、どうしてこんなに生きていてよかったって思うんだろう。もう、自分でビックリしちゃった。
ツワリがひどくて毎日苦しかったんだ。でも、アナタ会うことが楽しみで、こんな苦しみはいくらでも我慢するから、どうか無事に、どうかアナタが無事に育ってくれたらと、それだけを願っていたんだ。
ああ、へんよ。
こんなわたしじゃなかったんだよね。これじゃあまるで、どこにでもいる母親だよ、わたし。
自分の命なんかどうでもいいって思ってた投げやりなわたしに、神様が授けてくれたたいせつな命。
生まれたアナタを見て、「なんて小さいんだろう」って思ったよ。生まれたばかりのアナタは、わたしの手から離れて保育器に入れられちゃった。
たった一日なのに、逢えないことがどうしてこんなにさびしいんだろうって泣いたのよ。
そして次の日、アナタはきたの。わたしの横に、アナタはきたの。
******** その2に続く
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