エサ食うカメジ

  カメジという名のカメを飼っている。
 このカメ、息子が保育園のときにペットショップで買ってきてから、かれこれ二十年近くいるわけだ。



 ある春の日、とうとつに「カメが欲しい」と息子は言い、そんなこと言われたらわたしも欲しいと思ったし、じゃあミドリガメでも買ってこようとペットショップにいったら季節外れで、目当てのものはなし。


 一匹三千円の外国亀(名前はとっくに忘れた)を薦められ、子どもたちの熱い視線に負けて購入した。
 
 姉弟のぶん二匹買って育てていたのだが、一匹には四、五年育ったあとに、カラスに持っていかれた。後日、甲らだけ発見された。自然界は厳しい。


 このカメジ、それからすくすく育ってくれたのであるが、今年はちょっと困ってしまった。
 
 冬眠からあけても、いつになってもエサを食べない。
 いつもは5月に入ればパクパクと食べはじめるのだが、今年は大好物の乾燥エビをあげても「けっ!」という感じ。亀用のエサなんかは、パクッと咥えてみても「なんじゃこりゃ!」というふうに吐き出す。


 コマッタコマッタ。このまま食べずに衰弱していくのだろか。
と思っていたところに、「もしかして」と、犬のおやつ用の煮干しをあげたら、モグモグと全部食べた。
 
 数日、煮干しばかりを食べ続け、おかげで体力がついてきたのか、こんどはカメのエサも食べるようになった。
 
 いつもより二月ほど遅かったけど、カメジはいつものカメジになった。ほっ。なんの芸もないカメジであるが、芸をするために生まれてきたわけでなし。生きているだけでいいのだいいのだ。
 




 

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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