広場にて:わシリーズ
忘れさられてしまいそうなエッセイシリーズ
「 広場にて」
わたしと中三の娘は、広場の背もたれのないベンチに腰かけていた。
息子と妻は「買い忘れたもの」があるそうで、二人してふたたび戦場におもむいていた。GW真っ只中の、東京はお台場でのことである。
人ごみに疲れ、もう買物などする気力のないわたしと、自分の買物はすべてすませ、「かったるい」からふたたび買物にいく気のない娘と二人。
最近、娘と「長い会話」をしていない。娘はわたしを敬遠し、わたしは娘に遠慮している。でも、黙っているのも気まずいので話しかけた。
「あっちにいるカップル、見ろよ」
「なーに?」
「さっきからイチャイチャしてるんだぞ」
向かい側にいる男女がこの広場の風景にあわない。イチャイチャと見苦しい。イソギンチャクとウミウシ状態。男が女の腕に顔埋めてクネクネ動いている。
公衆の面前でそこまでするのはいかがなものかと問題提起した。
「べつにー。いいんじゃないの。本人たちの勝手でしょ」と、娘のその一言で終わった。
たしかに法律に反することではない。いちゃつくのは本人たちの勝手かもしれない。それ以上娘にいっても嫌われるだけだろうから会話をやめた。
「あーあ」と声を出しながらベンチでひっくり返って足をバタバタさせていたら、娘にいわれた。
「おとうさんっ」
「なんだよ」
「そんな格好はみっともないからやめなさいよ」
イソギンチャクとウミウシに決定的に負けた気分だった。ふん。
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