霊媒のオババさま 2

 続きです





 当時はカーナビなどもなかったのですが、それほど迷うこともなくオババさまの家に到着したと思います。



 田んぼや畑が見えるような場所だったと思うのですが、ハッキリとはわかりません。



 ほんとうにどうしたんでしょう。あのころの記憶は、霧の中に隠れてしまったようです。





 「ごめんください」と声をかけたら「ようきたようきた」とオババさまは出てきてくれて、それから大きな神棚みたいなのがある部屋に通されました。



 オババさまは大きなロウソクに火をつけてお経のような呪文なような言葉を唱えはじめました。そのロウソクは、白かったのか赤かったのか、それを思い出そうとしているのですが、色が出てきません。



 わたしはオババさまの隣に座り、ロウソクの炎を見ながらオババさまの呪文を聞いておりました。



 するととつぜんオババさまが静かになりました。



 なにごとかと思ってそちらに顔をむけますと、オババさまはロウソクの炎を指さし言いました。



 「見てみなっせ」と。



 ・・・「???」



 最初わたしはなんのことかわかりませんでしたが、燃えているロウソクのフチに、溶けきらなかったロウが1センチほどの高さで棒状になって立っていました。オババさまは、それを指さしていたのです。



 「おめさんを守ってくださっている○○さまが出てくださった」と日本古来の神様の名前を言うのです。



 たしかにそう言われれば人の形をしているようにも見えますが、たまたまロウがそんなふうに残ったようにも見えますし、わたしとしてどう反応したらいいのかわからずに「はあ・・・」と返事し、そして、「その○○さまは、どういう神様なのですか?」と聞きました。



 「この神様は、モノを書く神様」とオババさまが言いました。



 「そうなんですか?」



 「おめさんは、モノを書く仕事がいいがね」



 「そうなんですか??」



 「そうらね。モノカキになるといいがね」



 当時はまだ勤め人でしたので、書くと言えば、事故の発生報告書だの示談書だのばかりでした。





 「はあ。モノカキですか、オレ?」



 「そう、なりなせ。なったほうがいい」



 「はあ」







 「おや、いま二つ見えてきたぜね。ひとつ大きいのはおめさんのおばあさんらね。もうひとつ小さいのが見えるのは、これは赤ん坊のころ亡くなったおめさんの兄弟だろかな?」



 「はい、兄は生後1ヶ月でなくなったそうです」



 「そせば、その子らな。二人とも、オメさんの家族にちゃんと供養してもらってありがたいとゆーてます。それから二人はおめさんの体のことを心配してます。それがいつも気にかかるとゆーてます。おめさんの、おめさんのウチから西のほうにある病院にいくといいとゆーてます」



 「西のほうにある病院ですか?」



 「そう、西のほうにある病院にいくと、オメさんの病気を見つけてくれるとゆーてます。このままだと、オメさん、死ぬとゆーてます」







 次で終わります

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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