あんなに優しかったのに

 長い付き合いだったオム美と別れたのは、彼女を嫌いになったからじゃない。ただ、いつも優しく接してくれるタニ子に惹かれたからだ。



 いま思えば、オム美だってオレのためを思って厳しくしてくれたことはわかる。



 しかし、そのときは優しさにすがりつきたかった。

 そう、タニ子は会うたび優しかった。



 オレがどんなにダレていても、いつだって「だいじょぶよ」と言ってくれた。



 だから、オレはタニ子に乗り換えた。



 身勝手? そう、わかってる。

 身勝手と呼びたければ呼ぶがいい。



 オレはだれがなんと言おうと、タニ子がよかったのだ。



 ただ、

 その愛したタニ子に、最近は会えていなかった。

 

 いや、ちがう。

 会えなかったのではなく、会わなかった。 

 

 オレが避けていた。

 事情があった。



 じつを言うと、会うのが怖かった。

 こんどこそ叱られる気がしたから。優しいタニ子を怒らせてしまう気がしたから。



 でも、それじゃいけない。

 だらだらと時間ばかりすぎてしまう。

 タニ子に会わなければいけない。

 

 うん、きっとタニ子は許してくれるだろう。

 だって、これまでだって優しいタニ子だったもの。



 少し怒っても、そのあときっと笑顔を見せてくれる。

タニ子は優しいもの。



 そう思って、ひさしぶりに足を載せてみた。





 そしたら、



 がーん!



 タニ子が怒ったー。

 かなーり厳しい数字を出してきたー!



 なんじゃこりゃー。過去サイコーかあ!





 い、いいんだけどさ・・・

ダイエットなんてやめたんだから、いいんだけどさー  ( ̄∇ ̄;)



 でもさー、足を傷めて走れなかっただけでさー、なんだよ、その数字はぁ! なんだよ、その体脂肪のパーセンテージはぁ!



 少しくらいオマケしてくれてもいいじゃないかよぉ、タニ子ぉ!

あんなに優しかったのに、どうしたってんだよぉ。





 しかしまあ、冷静に考えればタニ子のせいじゃない。

 走っていれば腹が減るけど、でも、走らなくても腹が減るってことがわかった。



 走らずに食ったぶんだけ成長してたぜ、やっぱり。







 なお、どのくらい成長したのかはプライベートなことなので、書かないヾ(@゜∇゜@)ノ








uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

0コメント

  • 1000 / 1000