真珠


真珠なのだそうだ。


 


どこから聞いてきたのか「お互いに真珠を贈るみたいよ」と妻が言った。


 


真珠かあ。


真珠のネックレスなどを妻に贈るにやぶさかではないが、わたしのほうは、もらってどうなるものかな。装飾品はあまり趣味じゃない。


 


真珠の腕時計なんてのがもしあったとしても、きっと凸凹していて使い難かろう。真珠のデジカメとか、真珠の万年筆とか、真珠のスポーツカーとか・・・ああ、とにかく食指が動かん。


 


強いて言えば、真珠のネクタイピントかカフスボタンくらいか。しかしどのみち、ほとんど使わないしな。



よっし、真珠を買ったつもりで、なんかうまいもん食おう。


 


 


そんなこと話しながらヌクヌクしたファンヒーターの前で横になっていたら、眠たくなってしまった。


 


妻はと見れば、正座してテレビドラマを観ている。おもしろいテレビのときは正座して観るのが彼女流。


 


ウトウトとテレビを観たり寝てみたり、わたしには筋がなんにもわからない。


 


次に目覚めたときはテレビが消えていた。


妻は・・・妻も寝ていた。こちらに頭をむけスヤスヤと。どこから持ってきたのか、ケットを足にかけて。


 


こんな感じで30年。


わたしが27歳、妻が22歳の文化の日に結婚した。


真珠婚式だそうだ。


 


おめでとうを言う前に、こんな男と30年、ありがとう。




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