哀しみは 哀しみのままで 忘れずにいたい

 ハチと別れて一年経った。

 一年前の今日、朝の七時ちょうどに、ハチは逝った。



 その日の午前中に講演会が入っていたのだが、わたしの出発前に、ハチは逝ってくれた。



 ハチを抱いて、箱に入れた。

 目を閉じたその顔は、元気なときのハチの寝顔と同じように思えた。



 講演会で、わたしの声は、枯れていた。

 ハチが今朝死んだという話をさせてもらった。



 そして、その日の午後、犬の本の書評を書いてくれないかと依頼がきた。

 

 どうしてこのタイミングにと思ったのだが、読んでみたら・・・ハチが引きあわせてくれた本かもしれないと感じた。





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 今年の夏、「里親募集」で「あずき」を見つけた。

 ハチと同じ、雑種のメスだ。その姿はモグラみたいだった。



 犬が欲しくて探していたわけではないが、あずきの写真が目の前に現われ、いてもたってもいられず、問い合わせをした。



 妻には怒られたが「あずき」という名前にするという条件で飼うことになった。



 生後5ヶ月。

 モグラみたいだったあずきは、だいぶ犬らしくなった。



 あずきのいるその場所に、以前はハチがいたことを知っているのかどうか。ずっと前から自分はここにいると思っているみたいに馴染んでいる。あずきのはしゃぐ姿に救われている。

 



 哀しみは、哀しみとして、消えなくていい。

 ずっと覚えていればいい。



 ハチのこと。

http://www.niigata-nippo.co.jp/blog/fujita/2014/12/020378.html






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