醜くてけっこう

 正直言うと、父の入院している病棟の臭いが苦手だ。



 エレベーターを降りると感じる独特の臭いに気持ちが萎える。



 人間だから、生きていれば臭うこともあるのはわかるのだが、父のそばにいくと、さらに強く不快な臭いを感じて、気が滅入る。



 父には、ちゃんと歯磨きするように言っておくのだが、それだけではあるまい。体全体から出ている臭いだ。そんな父の存在が人さまを不快にすることになるやもしれず、それが心配になる。



 しかし、父のことをバカにしているわけではない。

 自分も父と同じなのだ。



 自分の中でも、父と同じその臭いを感じてハッとする。



 父よりは薄いが 確実に父と同種の臭いがわたしの体内にある。

 

 それは、わたしの中で、年とともに濃くなっていくのだろう。

 生き続けていくことで濃縮される醜さか。





 しかしほっとけ。醜くってけっこう。



 苦手であろうが、気が滅入ろうが、父はオレの父だ。オレはゲロ吐きながらでも、そばにいる。




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