ノート・父の入院

 13年前のノートが出てきた。

 ちょっとばかり入院するにあたり、メモ用に買ったのだな。



 そこにちょこちょこと書かれてある。

 六人部屋の右の窓側にわたしはいた。



 もうすっかり忘れていたこともあるのだが、ノートを見るとその当時を思い出す。



 昼間は冗談言って人を笑わせている愉快なオヤジさんも、夜にると、うなされていた。



 

 院内のボランティアさんが回ってきて、移動式で本の貸出しをやっていた。



 「なにか借りて」と言われたので、まあ、ヒマつぶしにテキトーに三冊。



 心が元気なときなら、けっして読まないだろうという本を無意識に選んでいた。



 やはり入院って不安なんだと思った。





 おかげさまで、今日、父は予定どおり入院できた。

 手術は明日。



 命にかかわるようなものじゃないからわたしは安心しているが、父にとっては初めての全身麻酔で、それなりに緊張はあるかもしれない。



 しかし、それ以上に、楽しみでもあるだろう。

 不自由がまた一つ減るもの。




uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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