消さなくていい傷

 体の傷が消えないように、心の傷も残ってしまうときがある。



 でも、それはわざわざ消さなくもいいのかもしれない。



 体の傷は、生きてきた証。

 生きているから傷がつく。



 心の傷も、生きてきた証。

 生きているから傷もつく。



 若いころは、傷がイヤだった。醜いと思った。

 

 最近は、その醜さも「いい」と思うようになっている。



 他人にわざわざ見せようとは思わないけれど、恥ずかしがって隠すことはしなくていいと思っている。





 忘れてしまいたい悲しみも、以前はあった。

 でも、それは忘れなくていいことなんだと思うようになった。



 いや、それはきっと、忘れちゃいけないことなんだ。悲しみは悲しみとして心にとどめておいたほうがいいことなんだ。



 傷も、悲しみも、自分自身の証なんだ。





 生きていると、おもしろい。








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