ハチのリードで

物置に行ってみたら、ハチが使っていたリードが出てきた。



しばらく使っていないかったの硬くなっていたが、あずきに散歩にどうかなと思った。





いままで使っていたのは、かわいげなリード。

赤ちゃんのときからずっとこれだ。



こんどは、ちょっとオトナっぽいか。



あずきも、あれれ?変だなってふうに見ている。

ハチの匂いがしているのかな。





でも、散歩に出てみれば、違和感も消えるようだ。

外には、気になることがいっぱいあるらしい。







ハチのときは、あずきほど散歩には出ていなかった。





ハチ自身も散歩が得意ではなかったのだが、散歩好きにさせなかったのは、飼い主のわたしの怠慢が大きいだろう。もっといっぱい遊んでやればよかったと思っている。





死ぬ三日前、動物病院にいたハチは、わたしを見つけて、ふらふらと立ちあがった。



動けないほど弱った体で揺れながら。



「おとうさんが迎えにきたから、いっしょに帰る・・・」と言ってるみたいに、近づいてきた。



でも、わたしは連れて帰らなかった。

連れて帰ったら必ず死ぬと思ったから。

病院で、なんとか治してもらいたかったから。



「ハチ、ごめんなごめんな」と言いながら、置いていった。



いまでも、そのときのことを後悔している。

ハチに意識があって、わたしといっしょに帰りたいと意思表示しているときに連れて帰ればよかったと後悔している。



うちに戻ってきたときのハチは、すでに周りに誰がいるのかわかっていなかったかもしれない。



ただ苦しそうに息をしていた。

もっと早くから家に連れてくればよかったと悔やんだ。



でも、あのときは、どれを選択してもきっと後悔するんだ。

別れのときは、なにをしてもきっと後悔するんだ。



そう思うことにしている。



その後悔を忘れないまま、あずきと遊ぶ。



あずきはいつも、楽しそうだ。






uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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