ケーキはいつから

 いまでは食べたいと思えば食べられるケーキだけれど、わたしがちっちゃなころにはなかったと思う。


 いや、もちろん街の洋菓子屋さんなどには置いてあったのだろうけど、そういう店の存在も知らなかったし、ケーキっていうのはとんでもなく高いもので、わたしたちが食べられるものなんかじゃないと思っていたもの。


 最初に食べたのはいつなんだろう?

わたしの妻は物心ついたときから食べていたと言っているが、これは妻が東京生まれだからかもしれない。妻と同じ年の女性は「小学校四年のクリスマスではじめてケーキを食べた」と証言しているもの。鮮明に覚えていると言うことは、かなり衝撃があったのだなと思う。


 わたし自身、いつだったのかは、ハッキリしたことはわからない。

 父がパン屋さんの季節従業員として勤め、そのときにクリスマスケーキを買ってきたのが最初だと思うけど、当時は甘いものが好きじゃなく、それで感動が薄かったのかな。

 饅頭のアンコを抜きとってバアチャンに食べてもらっていたくらいだから(いや、いまはとっても好き。食前食後・酒の肴にいつでもOK)。


 たしか、そのときのケーキはバタークリームだった。固めのクリームを口に含んで、ゆっくりとかして食べた覚えがある。


 そばに五歳ちがいの幼い弟がいた。わたしのことを「にいちゃん」と呼びながら、手と口に、ベッタリとクリームをつけて食べていた。弟は、甘いものが好きだったので、わたしのぶんのケーキも半分あげた(いまなら、やらない(笑))。


 いまでもたまに、バタークリームのケーキが食べたくなる。

食べると、その日の情景が浮かんでくる。あのころは、弟もかわいかったな。いまは、ちょっと怖い顔(笑)。



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