お互いを思って
わシリーズ
「お互いを想って」
2年前のお話、続き
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いま、人工膝関節全置換術(じんこう ひざかんせつ ぜん ちかんじゅつ)という足の手術で入院している母ですが、じつは自分の足の治り具合のことよりも、もっと気にかかることがあるのです。
それは、数年前に脳梗塞で倒れ、それから少々不自由な生活をしている父のことです。
わたしたち家族がしっかりと見ているからだいじょうぶとは思いながらも、それでもやはり自分が直接見ていないと不安なのでしょう。
ご飯をしっかり食べているだろうか。血圧は上がっていないだろうか。リハビリのための朝晩の散歩はマジメにいっているだろうか。そして、服のボタンをちゃんとはめてから外に出ているのだろうかなどなどと、そんなことばかり気にかけているのです。
実際父は、これまでとちがった様子です。母の言いつけをしっかり守り、朝晩の散歩には出ていますが、すぐに家に戻ってきてしまいます。夕ごはんを食べたあとは、いつもはそのまま布団に入って寝てしまうのですが、いまは夜遅くまで一人でテレビを見ています。背中を丸めたその後ろ姿は、母のいない寂しさをしっかりと物語っています。
しかし、寂しがりながらも、父の目下の心配ごとは母のことばかりなのです。
手術の傷口が痛んで苦しんでいないだろうかとか、病院のご飯をしっかり食べているだろうかとか。
ふだんは好き勝手なことを言いあっている二人ですが、こんなときは、お互いが相手のことばかり心配しています。
昨日、父を車に乗せて母の入院している病院にいってきました。
父がくることを知らなかった母はびっくりし、そしてとても喜んでくれました。
元気そうな姿を見てお互で安心し、二人ともいい笑顔をしてくれました。
帰りの車の中で、父がわたしに言いました。
「近所のみんなに聞かれたら、もうすぐ退院するよって言えばいいんだなー」とうれしそうに。
わたしもつられて「そうだよー」と答えました。
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