秋の憂鬱

 朝の寝起きに、寒さを感じるようになった。

 寒くて、呼吸が浅くなっていた。



 呼吸が浅いと、気持ちが憂鬱になってくる。



 いいんだろうか。

 オレ、いいんだろうか。

 オレ、いて、いいんだろうか。

 このまま、存在消えちゃってもいいのかもな、なんて思ってみたりする。いや、よくないことはわかっている。わかっているのだが、思ってみたりする秋。



 部屋にいき、淹れたコーヒーの、飲めぬほどの熱さに溜め息をつき、カップを置く。



 次に気がついたときは、コーヒーはすっかり冷えてしまっている。そして、その冷たさを嘆いて悲しむ。





 階下にいく。

 なにも知らぬ子犬のあずきは、わたしがどんなに悪人であろうと、わたしという存在をすべて受けいれ、飛びついてくる。この世に出て三か月にも満たない命が、懸命にわたしを愛してくれる。



 いや、それはもしかしたら愛などではなく、野性の打算なのかもしれない。



 ・・・・いや、そんなことを書いてしまうところが、寒さゆえに捻くれたわたしの打算かもしれない。





 ゴミ捨てにいき、母の友人と会う。

 「おはようございます」と笑顔で挨拶をし、世間話をしてまた家に戻る。なんだ、笑えるじゃないかオレ、と気がつく。



 温かいご飯を食べる。

 食後にまたコーヒーを飲む。陽の光が空気を暖めてくる。



 ケージの中であずきがウンコして鳴いている。それをあずきが踏まないうちにケージの外に出し、掃除をする。



 自由になったあずきが、廊下を突進している。わたしにぶつかり、また走っていく。

 どんなにわたしが悪人であろうと、またわたしのところに戻ってくる。



 今日も一日がんばろうと思ったが、気がつけばもう陽が暮れている。



 朝、あんなに寒かったのに、陽が暮れてから体が汗ばんでくる。



 だから、秋は、ちょっと困ってしまう。






0コメント

  • 1000 / 1000