回転系

 あずきは可愛いなあ・・・って、顔を見るたびに思うけど、飼い主バカって言われる覚悟もある。



 でも、ペットってそんなもんなんだろうなあ。他人が見たら「普通」か「それ以下」もしくは「その他大ぜい」みたいな存在であっても、飼い主にとっては掛替えのない存在なんだもの。



 どこかの大富豪が可愛い犬を連れてきて「これ、じつは一億円の犬なんだけど、お宅の駄犬と交換してくれませんか?」なんて言われても、けっして心は動かないもの。



 現金で一億円あげると言われたら、うーん、正直なところかなり迷ってしまいそうだけど。ああ、ゴメンなあずき。現金に負けそうな飼い主で。・・・なんて、アリもしないことを想像して己を責めるあたり、想像的ドMでしょうか。



 あずきの散歩はちょっとハードだ。

 あっちいったりこっちいったり。たしかに躾は行き届いていないあずきであるから、外に出れば好奇心を抑えきれずに騒ぎまくっているんだけれど、まあ、犬だもの、世の中には心ひかれるものってあるよなあ。電柱のたびに興味をそそる香りがあるし、葉っぱが飛んでくればそれが気にかかるし。よその人に迷惑かけたらいけないけど、人がきたらリードを縮めるし、車がきたらしっかり止まるし、ウンチ&しっこの類いは道路や人さまの地先ではやってないし。



 いや、そもそもあずきはよそでウンチをすることがない。



 散歩の最中はあずきにとっても忙しくて、ウンチなんてしている場合じゃないのだ。

 それに、あずきなりの作法があって、一ヶ所に留まり「んっ!」と力を入れていたすことはできないようだ。



 小さいころからオシッコはケージの中のトイレですることをすぐに覚えたのだが、ウンチのほうはいつまでたってもトイレから外れ、その場所が定まってはいなかった。



 外でするようになったら、なおさらアッチにひとつコッチにひとつというふうにバラバラになって存在するようになった。それをセッセと拾って片づけるのがわたしの役目なのだ。



 不思議だなあと思っていたが、ウンチの現場に立ち会うことができてその謎が解明した。



 あずきは、ウンチをするときにグルグルと回りだすのだ。そしてその遠心力でウンチを飛ばしていた。いや、嘘みたいだが本当なのだ。これまで飼った犬は、その場にしゃがんで「エラいスンマセン」みたいな顔しながらいたしていたので、あずきの方式は新鮮だ。



 原理はハンマー投げと同じ。ちがうところは、ハンマー投げの場合はたいてい前方の飛んでいくのであるが、あずきの場合は360度、どこでも飛んでいく。行き先はあずき自身もわからない。まさに糞切りのいいところで本体側から分離し、遠心力で飛んでいく。



 いつかあずきのいる庭から道路まで飛ぶようになったら、それはやっぱり世間の迷惑となるので、対策を考えなければいけないな。


uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

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